archive
30.12.2013 

宮下直子さんのバッハは凄い!

「月に還るらしいじゃぁない?アナタ。だからね、これに決まったのよ」 宮下さんの第一声はこうだった。  来春、「音楽の散歩道 in Onomachi α」ラストコンサートの曲の報告を受けた時です。 作曲をする人のバイブルとまで言われている曲で、すべてが含まれているという バッハのゴールトベルク変奏曲を弾いてくださるのです。 和歌山放送の番組で宮下さんにギャラリストとしてゲスト出演させてもらったとき 「おのまちにピアノがあればイイのにね!ヨーコさん^^」という一言から 始まったここでのサロンコンサート。今度で7回目となりフィナーレを迎えます。 この曲はバリエーションが30あり、配列がとても美しくまるで設計図のように見えます。アリアから はじまりアリアに終わる曲で前半後半とも3部形式でそれぞれの最後がカノン技法をとりいれている 大変複雑でリフレインを強いられているので、今の時代ではバッハの本意を伝えるにはバランス的に 不可能だと言われているそうです。 ・・宮下さんの言葉を聞いているともう、演奏が始まっています。 天空で竜みたいな蝶が一心不乱に舞い、いつストーンと倒れるかもしれないほどの強烈さ。 いつもそうですが、宮下さんとの打ち合わせは一日分のエネルギーを使います。 ほんの一時間ほどが10時間くらいの脳みその消耗量です。 だからもう、私たちの中では年末からコンサートは始まっています。 彼女は「ここではね、自分の弾きたい!と思うものが弾けるのよ。公的私的云々の会場という区別ではなく ”許されてる”と感じるのよ。私の人生の中でこの曲をこんなに早い時期に弾けるとは思っていなかったのよ。」 と熱っぽく語ってくれました。 立派なコンサートホールでもなく、グランドピアノでもないこの場で こんな素晴らしい女性が(あえてピアニストとは言いません)本気で本心から弾きたいと思う曲を 弾いてくださいます。 わたしはただ、振動で前後に揺れるアップライトピアノの横で彼女の全体を見守るだけですが 指先こそ動かないだけで全身で融合することだと思います。 「お正月も頑張って練習します!」と言われ、「はい、頑張ってください!」というしかない私は いったい、何者やねん?と自分でつっこみながらも、胸が一杯になりました。 宮下直子さんのバッハ・ゴールトベルク変奏曲、凄いと思います。 1月13日(月)祝、14時~、おのまちでお待ちしています。